洗濯機に物申す
家事をしていたときの話だ。
洗濯しようと洗濯機の前に立ち、こちらも機械のごとくいつものようにボタンを押した。
しかしその日の僕は何か違ったのだろう。
気づいてしまったのだ。
「お急ぎ」ボタンの存在に。
そこでふと思ったのである。
さいしょからそうしろよ!!!
機械というのはこちらから「急げ!」と命令しないと急いでもくれないのか。
いや、ちょっと真剣に考えて欲しい。
おそらくだいたいの洗濯機には、「おまかせ(標準)」と「お急ぎ」のボタンがあるだろう。
僕はこれまでの人生でいちども「お急ぎ」を使ったことはない。
それは「お急ぎ」を知らなかったから、いや、意識したことがなかったからである。
仮にその存在を知っていたとしても、どうせ「お急ぎ」は雑に洗っているだろうと勝手に決めつけ、結局おまかせていただろう。
そもそも、どうして「おまかせ」と「お急ぎ」なんて分ける必要があるのか。
ジャジャン!さてもんだいです!
この2つの洗濯物、どちらが「おまかせ」でどちらが「お急ぎ」でしょう!
という問題にいったい何人が確信をもって答えられるというのだ。
人に仕事を頼んだとき「おまかせコースとお急ぎコースありますけどどちらにしますか?」と質問されたらどう思うだろうか。
さいしょから急げばみんなハッピーじゃないか。
ボタンなんて1つあればいいのだ、わけのわからん機能をつけるんじゃない。
とはいえやっぱり「お急ぎ」はどこか信用できない。ぐだぐだ言うのは実際に使ってからだ!
ということで、お急いでみた。
さいこうだ。
10〜15分くらい短縮された。しかも「おまかせ」との違いなんてまったくわからない。
「お急ぎ」最高だ。みんなもお急いだほうがいい。どんどん急いでくれ。
ただ洗濯機を回しただけなのに、なにかすごい発見をしたかのような高揚感につつまれた。
きっとアメリカ大陸を発見したコロンブスもこういう気持ちだったのだろう。
さあ、次はご飯を作ろうとお米を洗い炊飯器にセットした。
これもいつも通りの動きである。
炊飯器にも「早炊き」のボタンがあった。